自動運転バス実証実験開始、経費は6,500万円!レベル2って何?本当に考えるべき大切な課題は何か。

未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。

津山市のみならず、日本中の自治体が直面する公共交通網維持問題。

少子高齢化・人口減少をはじめとした様々な課題が複合的に絡まって、地域交通網を維持していくことが難しくなっているまちは枚挙にいとまがありません。津山市においても、先だっても運転手不足による路線バス減便のニュースが駆け巡ったところです。

そんな中で、津山市では一つの大きな動きがありました。

自動運転バスの実証実験がスタート!

上の写真&本日のアイキャッチ画像は、今回の実証実験のための公式LINEアカウントで配信されたものを拝借しています。アイキャッチ画像にはよく見ると私の後ろ姿もバッチリ写り込んでおります。

本日9時半から津山駅前広場で行われた出発式は、行けるようなら覗こうとは思っていましたが別件対応で間に合わず…その後開催された、グリーンヒルズ津山リージョンセンターでのシンポジウムには、何とかギリギリ潜り込ませていただくことができました。せっかくなので今日の記事では、「津山市における地域公共交通課題と自動運転バスへの期待」と題されたシンポジウムの内容をもとに、単なるイベント報告ではなく…自動運転ってそもそも何なのか、津山の課題とどう関わるのかという視点で、少し整理してみようと思います。

このところこうやって自分自身でハードルを上げることで、ブログ更新にリソースを奪われ過ぎている気もしていますが…喜んでくださる方や楽しみにしていると言ってくださる方、参考にしていると言われる方が、有難いことに議会や行政関係者にもおられるので…頑張れるだけは頑張っているのが正直なところ。

実証実験の区間はJR津山駅(津山市大谷)とグリーンヒルズ津山リージョンセンター(同市大田)を結ぶ往復約10キロのルートです。実証日は計8日間の予定。定員15人(運転席を入れると16人とのこと)の中型EV車両を用いて、最高時速を35キロ以下に抑えつつ、1日4往復のダイヤで走らせるというものです。

車両はGPSと3D地図を使って走行ルートを把握し、車体に取り付けた多数のカメラやセンサーで周囲を監視しながら、障害物を検知すると自動的に回避できる仕組みとのこと。通常時は運転士がハンドルやアクセル、ブレーキに触れずに走行するものの、歩行者の急な飛び出しや他車の無理な割り込みなど、自動運転だけでは対応が難しいと判断される場面では手動運転に切り替えられるように、運転手が常時対応可能な状態で走行します(後で触れるレベル2に該当)。

初日はまず出発式の後…関係者の皆さまが試乗し、前を走る車両の動きや信号に合わせて滑らかに減速・停止する様子を確認したとのことでした。シンポジウムでも谷口圭三市長からは通常のバスと比べても遜色ない乗り心地であったこと、ドライバー不足解消の一助にしていきたい旨などが述べられました。私自身も15日に乗車させていただく予約を入れていますので、非常に楽しみにしています。

今回の実験で安全性の検証や課題の洗い出しを進め、市としては、2028年度から特定の条件下で無人運転が可能となる自動運転レベル4の導入を目標に掲げるとのこと。

また、今回の実証にかかる事業費は6,500万円で、約8割は国の補助金で賄う計画とのことでした。

2026年度以降も同じルートでの運行を継続しつつ、2027年度にはルートの一部区間において、運転手がいない状態での自動運転運行の試行に踏み込む方針のようです。冒頭に書いたように市内では路線バスの大幅な減便も行われており、今回の自動運転バスの取り組みは、こうした状況を背景とした対策の一つでもあります。

まず自動運転に”レベル”があるって知ってた?

シンポジウムでも前提として触れられていた、自動運転の“レベル”のお話をいておかねばなりませんね…詳しくは下記の表の通りです。一応、自動運転なしのレベル0というものもありまして、0〜5の6段階に分けられているわけです。

津山市での今回の実証実験はレベル2です。

国土交通省の道路局道路交通管理課長による講演では、技術の中身の説明もわかりやすく、自動運転の実装に向けての技術革新、現在の自動運転の世界のリアルなどについて解説されました。

「人間が苦手な場面は、自動運転も苦手」

例えば…夕方で信号が見えづらい、見通しの悪い交差点、飛び出しがありそうな場所…私たちがヒヤッとするシーンは、機械にとっても難しいわけです。例えば道路側にセンサーを付けて情報を送るなど、“インフラ側も頭を良くする”発想が必要、つまりインフラ協調の重要性も再認識しました。

諸外国では、完全無人タクシーが「実証」ではなく「営業」として、普通に街の中を走っているとのこと…アプリで呼ぶと、自分の名前を表示した車がやってきて、見た目は普通の車だけど、運転席は無人。それでも当たり前のように街を走る…そんな光景が、すでに海外の一部では現実であることなどにも触れられました。道路事情・法制度・安全基準など、日本独自の条件を踏まえた上で、日本版の自動運転をどう作るかが問われているというメッセージだと受け止めています。

その後のパネルディスカッションでは、導入で”津山の足”が今どうなっているのか…産業経済部長から諸々の説明がありましたが…つまりは「いまある足は細っている。人も足りない。その一方で、生活の足は守らなければならない」という板挟みの中に、私たちは立たされているという前提のもとで、じゃぁどうすんのよって話だよなと思いながら伺っていました。

JR西日本岡山支社長からは、「駅まで行く足がなければ、鉄道も利用してもらえない。鉄道・バス・タクシー・デマンド交通・自動運転等々、全部ひっくるめて考えないと最適解は出ない」といった趣旨の発言があったように受け取っています。事業者ごとの“縦割り”を越えた連携の必要性も指摘され、むしろ鉄道の自動運転の方が色々と早いのでは…と思わなくもありませんでしたが、質疑応答の時間などはなかった上に、話が逸れるなと思って忘れることにした次第です。

国交省道路局道路交通管理課長からは、観光の二次交通としてだけでなく高齢者や免許返納者の足としても、自動運転は大きな可能性を持つこと…津山は自然・歴史・文化・食など観光ポテンシャルが高く、まちの構造も含めて自動運転バスの実装に向いた地域だという評価が示され…(ちょっとリップサービスし過ぎじゃない?)と感じたのも事実ですが、「日本の中でも早い段階で、レベル4実装のモデルを示せる場所になり得る」という、ちょっと嬉しいエールもいただきました。

谷口市長からは…本来は来年4月に「新しい公共交通の形」を示すつもりだったが、バス減便など、現実の方が先に動き始めてしまっていること…現在の路線バス・AIデマンド交通等に加えて、自動運転バスも含めた再設計を前倒しで考えざるを得ないこと…交通空白地域のカバー、既存路線の見直し、観光との連携などをセットで検討していく必要があることなどが語られました。

そして、市長自身が、「津山でも自動運転の仕組みを取り入れて、地域の公共交通を充実させていきたい」という趣旨で、自動運転導入に前向きな姿勢をはっきり示されたことは、議員としても重く受け止めています。

自動運転は手段の一つで、目的ではありません。

高齢者や子どもを含めた誰もが…車を持たない人も含めて、ストレスなく快適に移動できる津山にすることこそが、目的だと言えるでしょう。公共交通事業者が「もう続けられません」と言わなくて済むような、持続可能な仕組みをつくり…観光客が「行きやすい・回りやすい」と感じる津山にするための手段の一つが、自動運転バスなのです。

「使ってこそ残る、使わなければなくなる」

こうした公共交通の現実を、市民の皆さまとしっかりと共有し…「なるほど…ではそこに自分自身はどう関わるべきだろう?」と、一緒に考えていただかなくてはなりません。さもないと、どんな未来の技術を導入しても、持続可能な仕組みにはなりません。

自動運転バスの実証運行は、単に新しい車が走ったというイベントではなく…津山の“これからの足”をどう守り、どう改善していくかを考える出発点なのです。

本日はこんなところで。それでは、また明日!

三浦 ひらく

三浦 ひらく -PROFILE-

世界を暮らしやすく楽しく変えるため、相棒ひらくマと一歩ずつでも現状改善していくために日夜ハゲむ、1978年生まれの岡山県津山市議会議員。選択肢の多い社会を目指し、政治も手段の一つと捉え、地域振興、多様性理解促進、生きづらさ解消、表現の自由を守るための活動、インフルエンザ脳症撲滅、臓器移植意思表示推奨などをライフワークとして活動している。