なまけものの楽園からの脱却。議選監査委員が果たすべき役割とは?可児市の川上議員による決算直前勉強会!

未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。

議会の機能を本気で高めていこうと思ったとき、避けては通れないのが決算審査監査です。議員として2期目を務めさせていただいているわけですが、長く務めれば務めるほどに、その重要性を強く感じるようになってきました。

だからこそ私は、昨年の決算審査で津山市議会の歴史上では有り得ないレベルの長い質疑をさせていただきましたし…先だっての5月臨時会では監査委員の役を本気で取りに行ったわけです。

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本日は東京で、ローカル・マニフェスト推進連盟(通称LM)の主催による”決算審査直前特別集中セミナー”に参加してまいりました。

全国各地からオンラインと現地をあわせて90名以上の参加申し込みをいただき、ハイブリッド開催させていただきました。私は連盟の役員を務めさせていただいていることから企画運営に携わる立場での参加であり、今回も司会進行を担当させていただいたところです。

議会関係者の関心の高さを物語る、熱量が感じられる場となったように感じています。

講師を務めてくださったのは、岐阜県可児市議会で議選監査委員を4年間務めてきておられ、現在は全国各地で議会改革や監査制度の支援に携わる川上文浩さんです。かつて会派ツヤマノチカラで可児市を訪れた際にも紹介させていただいたことがありますが…可児市は津山市の歴史友好都市(今年は都市縁組から30周年!)でもあり、川上さんは議長を3度務められ、4度目を務められることも内定しているベテランの大先輩で、普段から勉強させていただきまくっている方の一人。

非常に先進的な可児市議会の取り組みの現状、そこに至るまでの経緯なども含め…監査という“見えにくい仕事”の本質について、豊富な経験に裏打ちされた実践者ならではの視点から、本日の研修では3時間みっちり、川上さんならではの熱い語り口調でしっかりと弁舌を振るっていただきました。明日はさらに実践的な部分を深掘りしていただく予定です。有料研修ですので、共有できる範囲は当然に限られますが…学びと気づきを、私自身のインプットのためのアウトプットとして、簡単にまとめておきます。

「なまけものの楽園」だった過去──誰も見ていなかった決算

今では全国に誇れるような取り組みを行っておられる可児市議会であっても、川上さんが市議に初当選された頃には決算審査はまさに「形だけ」のもので、積極的に参加していたのは共産党や一部会派の議員のみであり、主流会派は参加していないも同然だったとのことでした。報告は読み上げるだけ、質疑もほとんどない。そうした状況に違和感を覚え、「決算って、実は一番大事なんじゃないの?」と感じた川上さんは、決算審査のあり方を一から見直していきます。

「なまけものの楽園」からの脱却です。

これはまさに言い得て妙だと感じる表現で…耳が痛いと感じる議会は決して少なくないのではないでしょうか。ハッキリ言って、津山市議会にも同様な印象を覚えたことは一度や二度ではありません。川上さんは「決算をしっかり見ないまま、次の予算を審議するなど本来あり得ない。順番が逆」だと断言します。

「予算→執行→決算→次年度への提言」という循環をつくる

この当たり前の循環が回っていない自治体が、驚くほど多いというのが、数百件の視察受け入れなどにも対応されてきた川上さんの現場感覚です。

予算執行を見届け、検証し、次に活かしていくためには、決算審査が単なる点検作業ではなく、「未来への提言」に昇華されていなければ意味がないというわけです。可児市議会では、決算審査の結果をもとに、毎年8月末から9月いっぱいかけて「来年度予算に対する提言書」を作成し、実際に市長に提出しているとのことでした。今回の研修ではこのような可児市で実際の予算決算委員会で使われた資料も数多く共有いただいています。

上に書いたように全てを公開するわけにはいきませんが…これについては議会だよりなどにも掲載されている公開情報なので当ブログで使わせていただいても差し支えないでしょう。具体的には、例えば令和7年度予算編成にあたっての提言は、下記のような内容です。

可児市議会の議会だよりから。

大変に素晴らしい内容、そして取り組みだと思います。

そして、その提言内容が翌年度の予算に反映されるよう、議会・監査・執行部が三位一体で議論を重ねているという実例は、我々にとっても大きな示唆とチカラを与えてくれるものだと感じました。

議選監査委員の役割と重み

自治体の監査委員には識見監査委員議選監査委員がいます。前者は専門知識を持つ外部人材であり、後者は議会から選出される現職議員です。自治体によっては、議選監査委員を廃止しているまちもあります。私自身も、しっかり働かないような監査委員であれば必要ないと思っていますので…そういう議選監査委員が選ばれるようなことはない議会にしていく必要があると強く思っています。

川上さんは言います。

「議選監査委員には、議会の目線・市民の目線を持ち込むという、唯一無二の役割がある。」

識見委員だけでは気づけない“現場感覚”があるわけです。議場で交わされている議論、住民から寄せられる声、それらを知っているのは、現職の議員だからこそだと言えるでしょう。

問題はその機能が生かされていないケースが多いこと。

実際、監査委員の役割を「名誉職」「お飾り」程度にしか見ていない議員や議会が残念ながら存在するのです。

あなたのまちにもいるかもしれない…。

議選監査委員を出すことの意味、それは議会が監査に責任を持ち、そこから市政全体のPDCAサイクルを回していくということに他ならないのです。

監査は行政のためではなく、市民の未来のためにある

ここまで読んでくださった方ならおわかりでしょうが、川上さんは、監査を単なるチェック機能とは捉えていないわけです。監査委員は課題を洗い出し、改善に向けた提言を行う“伴走者”であるべきだと語られていたように感じました。これには行政の伴走者という意味と同時に、議会つまりは市民の伴走者という意味も込められていると思います。

行政と癒着するのではなく、適切な距離感を保ちつつ望ましい変化を促すことが肝要ってこと。

現職監査委員であり、議長も何度も務められている川上さんの言葉には、やはり重みがありました。監査の現場では、ときに不正やミスに気づくこともあるわけです。そうした場面で、単に責め立てるだけでは改善には繋がらないのです。現場と信頼関係を築いた上でこそ、真に意味のある助言ができる…これはまさに、議会活動そのものと通じる姿勢でもある、目的達成のための示唆深い、それでいて大変強烈なメッセージでした。

監査報告は「動かすため」に書く

監査結果は、報告書や意見書としてまとめられます。ところが多くの場合、それが“形式的なもの”になってしまっているのが現実です。川上さんは、「読み手が行動を起こしたくなる報告書にすべき」だと言い切られます。ごもっとも過ぎる話ですが…それを出来ている自治体が多くはないからこそ、今日も多くの皆さまが参加してくださったのだと思います。

津山市でも、そうした印象は拭えません。

事実の羅列のみにとどまるものではなく、課題と提言を明確に打ち出した、そして誰にとっても理解しやすいものであること…これが報告書、意見書の本来あるべき姿であり、それは識見監査委員ではなく、現場感と発信力を持つ議選監査委員の役割だとも説かれました。

寄り添うのではなく、伴走する監査のあり方

講義の中で川上さんは、繰り返し”伴走型の監査”を強調されていたように感じました。つまり、行政が描く未来に無批判に寄り添うのではなく、「それ、本当に住民のためになりますか?」と問い続け、軌道修正を促す役割こそが、監査の本質だということではないかと思っています。

市民目線、議会目線、そして“納税者・有権者の視点”を忘れずに…。

このスタンスこそが、まさに今求められている監査そして決算審査のあり方の鍵ではないでしょうか。

議会と監査を“繋ぐ”存在に

川上さんは今日の講話を、「肩書きだけに満足せず、監査を通じて議会を動かし、議会を通じて行政を動かすような“繋ぎ役”になってほしい。」というような趣旨の言葉で締め括られました。決算審査は、行政の評価をするだけの場ではなく未来を描く場です。だからこそ、数字と書類に目を通すだけでは足りない。そこにある“人の声”“現場の思い”を感じ取るチカラと、そしてそれを言葉にして伝えるチカラが、議員には求められていると思います。

研修は、川上さんと同じくローカル・マニフェスト推進連盟の共同代表の一人で、マニフェスト大賞の実行委員長でもある鈴木綾子江東区議より挨拶をいただいて閉会しました。

参加しての個人的な気づき

私自身、監査制度に関心を持ち、制度の意義を信じて取り組んできましたが…冒頭に触れたように、議員2期目では監査委員にはなれずじまいです。ただ今回の勉強会は、監査委員ではなくても「まだまだできることがある」「もっと知見を活用できる方法がある」と感じさせられる学びの連続でした。

議選監査委員とは、議会の“監視機能”と“提案機能”の両輪を、制度的に体現する存在だと再認識したこともあり、自分自身がその責務を負わせていただくことが津山の未来のためになると胸を張って言えるようになるためにも…まだまだ精進していかねばと思います。

監査を通じて気づいたことを、議会の場で活せるように仕組みを整え…そして議会の声をまた、監査の現場に届ける。その往復運動を続ける中で、結果として行政がより良く変わり、そしてまちが望ましい方向に変わっていく…そうした未来が実現できると信じて、取り組んでいきます。

本日はこんなところで。また明日!

三浦 ひらく

三浦 ひらく -PROFILE-

世界を暮らしやすく楽しく変えるため、相棒ひらくマと一歩ずつでも現状改善していくために日夜ハゲむ、1978年生まれの岡山県津山市議会議員。選択肢の多い社会を目指し、政治も手段の一つと捉え、地域振興、多様性理解促進、生きづらさ解消、表現の自由を守るための活動、インフルエンザ脳症撲滅、臓器移植意思表示推奨などをライフワークとして活動している。