美作大学公立化はバラ色の未来ではない?地に足をつけた議論の重要性。鈴木章文先生を招いての講演会レポ!

未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。

美作大公立化調査特別委員会。議会の見える化は市民の関心に反比例?提供された材料が燃料にならぬように。

2025-12-14

昨日の記事でも予告的に触れていた内容なのですが…そもそも昨日の記事が日付としては11日の話を書いていますので、今日の内容は12月12日の話です。本日はすでに15日ですのでタイムラグが生じていますが、誰もが忙しい師走やねってことで…何卒ご容赦ください。

私自身が委員長を務めさせていただいている美作大学公立化調査特別委員会の調査研究の一環として、実施させていただいた“講演会”について、今回の記事では内容をザックリと共有します。

実は一旦は結構詳しめのボリューミーな記事にまとめたんだけど…それはそれで、まぁ備忘録的に自分自身の中での整理用に置いておくとして、色々と考えた結果として…最終的には最初から書き直した記事が本稿であります。

講師を務めてくださったのは、鈴木章文先生。

先生はご自身でわかりやすいスライドを用意してくださっていて、その内容を簡潔にまとめてくださった資料も共有くださっていますが…これらはあくまでも有志議員と、傍聴的に同席くださっていた担当部局の職員の皆さまのみのクローズドな会における講話のベースとして配布くださったものですので、公開は控えさせていただきます。

…とは言え、報道案内も出している件でしたし、公金ベースで実施させていただいている会です。講師のプロフィールくらいは紹介させていただいても差し支えないでしょう。

華々しい経歴をお持ちで、文部科学省を定年退職されて9年が経つ現在も、千葉大学の学長補佐をはじめ、さまざまな形で活躍されている方です。今回の話は特別委員会の委員でもある同僚議員、金田稔久議員の仲介があって実現した会でした。お骨折りいただいた金田議員に感謝しています。

結論から言うと…「公立化、イケるんじゃね?」みたいな空気が一瞬出かけたような気がするものの、すぐに「いや待て、現実はそんなに甘くないぞ…?」と皆が我に返る。

そんな、非常に“議会っぽい”時間だったような気がします。

事前に少しだけ津山市の高等教育の現状を実際に確かめておきたいとのリクエストがあり、午前中に金田議員と河村副委員長、議会事務局の面々と共に美作大学に加え、津山工業高等専門学校(津山高専)も訪問させていただいていました。その際の関係各位との意見交換などからも伝わっていましたが…鈴木先生は非常にざっくばらんにお話をしてくださる方でしたので、変に形式張らない、雰囲気の良い講演会となったことはアイキャッチ画像などからも伝わると思います。

当日の視察内容なども盛り込みつつ、しかも当日急遽いただいてきた美作大学や津山高専の資料などにも触れながらの講演内容はわかりやすく、また非常に幅広い視座からのお話でした。押し付けることなく、これはあくまでも個人的な主観だと断りつつも、随所にご自身の思いも盛り込んでくださりながら、示唆深く興味深いご指摘もいただけたと感じており、それぞれの議員がどう受け止めるかは本人次第ですが、良いキッカケをくださったと思っています。

まずは前半戦:数字の話でテンションが上がりかける

津山市が実施していた外部有識者による、美作大学の公立化に関する有識者検討会議においてなされた公立化をめぐる論点整理や、他地域の事例、そして”数字の見せ方”についてのお話などを伺いました。

やはり出てくるのは、12月議会での質問戦でも私を含めた多くの議員が触れた、有識者会議から最終的に市長に提出された報告書の根拠ともなった津山市の公立化調査の結果についてでした。当該調査には津山市の財源から1,500万円が支出されていますが、これについては12月議会での私の質問への答弁で、詳細な業務ごとの金額目安や工数割合などは、津山市情報公開条例に定められた非開示情報に該当するために示すことができないと言われており、その費用対効果などが判断しづらい印象があります。

これは有識者会議の場でも触れられてきていたことですが、公立化の際に学部区分によって単価が変わる交付金の前提をどう置くかで、収支の見え方がガラッと変わることについて、かなり深掘りされました。

つまり、資料を見ているだけだと「おっ、意外と公立化イケるんじゃない?」と見えてくる瞬間があるような気がしてくるのです。ただ先生からは…「数字が“バラ色”に見える提示の仕方には注意が必要」「表の数字の並べ方ひとつで、直感的な印象が変わってしまう」というような趣旨の発言がありました。

”数字の見せ方”への注意喚起があったように受け止めています。

こういう話…正直言って、議会でも多々あることなんです。もっと言えば…SNSなどでもしばしば事実誤認を誘発する”詐欺グラフ”などが話題になるように、世の中には怪しい眉唾物の資料が蔓延っています。行政の現場においても実際に、「いや確かに間違ってはいないかもしれないけど…メチャクチャ誤解されやすいでしょソレ!」って感じの資料って、実は山ほどあるんですよね。

あ、これは個人的な印象ですモチロン。

当局からの説明:前提確認は一応やっている

休憩直前に問題提起がなされ、10分間ほどの休憩を挟んだ後半戦では、「前提となる資料提示の仕方は本当に大丈夫なのか?」という確認が入り、当局から説明いただく場面もありました。

細かく説明くださいましたが端的に発言趣旨をまとめるとつまり、「前提を勝手に置いて“夢の数字”を作っているわけではない」ということでした。ここは非常に重要で、当局の説明の範囲では「少なくとも、確認できるところは確認している」という整理になります。

鈴木先生は理解を示しつつも同時に…減価償却などの扱いで、見せ方次第で印象が変わることや、“数字の意味”が伝わらないと、市民にも議会にも誤解が残るという警鐘を鳴らしてくださいました。

地味かもしれませんが超大事な論点だと思います。

数字そのものよりも、どう伝わってしまうかの方が”致命傷”になり得ることすらあるのは、私たちの生きるこの世界の不思議なところでもありますが…間違いなくある”事実”ですからね…。

後半戦:最も刺さった直球質問「学生、本当に集まるの?」

後半戦と言える質疑応答タイムに入ってから、空気がガラッと変わりました。先生の歯に衣着せぬマシンガントークで、同僚議員各位にも火がついたような印象も覚えたところです。

「公立化したら、学生は本当に集まるんですか?」

超ド直球と言える、こんな質問も飛び出しました。少子化の中で、大学は総じて全国的にしんどいわけですが…過去のデータからも、”公立化したら志願者が増えて偏差値も上がりそう”みたいな期待が出るのはワカルところです。ただし、そんなバブルみたいな話が、この人口減少社会の中で5年後10年後も同じように続くの?という不安は、誰も消せないわけです。

講師の答えも、ここは非常に現実的で…公立化で競争率が上がれば、逆に“地元の入りやすさ”が失われる可能性もあることや、卒業後に地域に残るか(定着)は別問題で、アクセスや地域環境が影響するということなどに触れられました。

要するに、公立化=ハッピーエンド確定、ではない。

要は誰も保証はできないってこと。

超当たり前の話なんだけど…だからこそ、“大学を残す”と“地域が良くなる”はイコールじゃないってことを、ちゃんと分けて考えないと危ないよね…という話だったと理解しています。

さらに出てきた「広域で考えるべき」という視点

もう一つ、今回の講演会で繰り返し出てきたのが…かねてより議会において私自身も言い続けております「公立化を津山市だけの話にしない」という視点です。

県北エリア全体で高等教育をどう位置付けるか…既存の近隣公立大学等との役割分担や連携について…津山だけ良くなる構図を目指すのではなく、全体最適化の中で考える必要性などなど。個人的には理屈としてもメチャクチャ正しいと思っていますが、きっと政治的にはメチャクチャ難しい面もあるのだろうなとは考えながら議論を聞いていました。

広域で考えるほどに関係者が増えて、意思決定が重たくなるのは確実ですしね。

でも、ここを避けて通ると”津山市だけで抱え込んで詰む”可能性もある。

結局はこのあたりが、まさに今後も本件のポイントになっていくのかなと考えています。

「私立のままでも出来ることはある」論点も

公立化の話ばかりが目立ちますが、この特別委員会は公立化の是非を含めて調査研究して論じる場です。今回の講演会では私立で存続する場合の打ち手についても触れられました。

私学助成には一般補助だけでなく特別補助があり、取りに行く余地があると思われることや、外部資金(共同研究・受託研究・寄付等)の獲得が重要であること、大学側が主体的に“どういう大学になりたいか”を語る場が必要であることなど、私見を交えて言及くださいました。

つまり、公立化か私立かの二択で思考停止せず、“大学の中身をどうするか”を議論しないと意味がない、という話。

結果としては講演会の内容は正直、行政側としてはあまり歓迎すべきものではなかったかもしれません。ただ、こういう、有識者会議のメンバー以外の第三者の声を伺える場も一つの意見を伺う機会としてとして大切に考えていただけたらとは願っています。期待だけで走ると、後で市民が一番しんどくなるので、議会はもちろん執行部の皆さまにも、広く声を聞く姿勢は持っておいていただきたいところです。

美作大学公立化は、現在の津山市にとって最大級の論点の一つ。

だからこそ勢いで結論を出すことなく、リスクと選択肢を丁寧に積み上げていって見比べていく作業が重要になります。

それらの情報が信頼に足るものであることは大前提。

私は委員長として司会進行を担当させていただき、開会挨拶もさせていただきました。

鈴木先生の紹介は懇意にされている金田委員から、閉会挨拶は河村副委員長からしていただきました。また今回開催にあたり、議会事務局の皆さまにはかなりの強行軍で諸々を段取っていただくことになり、ご無理をお願いしました。今日の経験を市政の場に反映させていくべく、各議員が役立てていくのはこれから先の話になります。勝負はこれからといったところですが…まずは試みが無事に終わったことで、改めて関係各位に感謝しているところです。

そして何より、津山市までの遠路お運びくださった鈴木章文先生に、心からの感謝を申し上げます。

有難うございました!

また動きがあれば随時共有していきます。

本日はこんなところで。それでは、また明日!

三浦 ひらく

三浦 ひらく -PROFILE-

世界を暮らしやすく楽しく変えるため、相棒ひらくマと一歩ずつでも現状改善していくために日夜ハゲむ、1978年生まれの岡山県津山市議会議員。選択肢の多い社会を目指し、政治も手段の一つと捉え、地域振興、多様性理解促進、生きづらさ解消、表現の自由を守るための活動、インフルエンザ脳症撲滅、臓器移植意思表示推奨などをライフワークとして活動している。