未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。
本日は福岡県古賀市への視察報告について。
昨日の福津市訪問に続き、津山市議会の総務文教委員会の面々で訪れた所感等をまとめ、お届けします。
同行メンバーは広谷委員長、河村副委員長、末永委員、そして私を含む議員4名と、総務部長・教育次長・議会事務局職員の7名です。今回の視察地と視察内容は、ほとんど私が提案したものを議会事務局職員さんが調整してくださったようなものであり…昨日も昨日でもちろん楽しみにしていたのですが、本日、2日目の視察地となる古賀市は、私自身は二度目の訪問となる自治体であるにもかかわらず、個人的にメチャクチャ心待ちにしていた理由がありました。
それは、田辺一城市長の話を聞けるからです。


もっと言えば、私自身が話を聞かせていただくことよりも、私の世代で政治に取り組んでいるなら知らないといけない存在でしょとの気持ちで、普段から周囲にもイチオシしまくっている田辺市長の強力なリーダーシップのもと、真の意味での「共創のまちづくり」を進めて、注目されまくっている古賀市を訪れて、同僚議員や津山市幹部職員の皆さまに、田辺市長と古賀市を知っていただきたかったから、です。
一年少々前に一度訪問させていただいたことがあるだけの関係性ですが、今回、田辺市長はそんな自分のことも記憶してくださっていて、全国を飛び回るメチャクチャ忙しいスケジュールの中で、私たちの視察対応のために1時間半以上も時間を割いてくださいました。前日にもわざわざご連絡くださったり、その圧倒的な全方位への気配り、そしてその上で、ときには非常に難しい決断も含まれる”決定する”という首長の責任に毎日向き合い続けている姿勢には、心から敬意を覚えています。
もう初めに書いておきますが…本当に素晴らしい話を聞かせていただきました!


視察の前半戦は田辺一城市長の1時間以上に及ぶ講話…と言うか、完成されたプレゼン!
完成されたと書きましたが、内容は毎日刷新されていっているはずです。取り組む覚悟や姿勢の面での内容など、前回訪問時と似たようなお話をしてくださった部分もはありましたが…次から次へと新しい取り組みが盛り込まれていくので、常にアップデートされているんだろうなという印象です。以前から知っていた取り組みの中にもなるほどそうなのかと思うような点がありましたし、新たな施策も思わず激しく頷いたり、思わず笑ってしまって声が出そうになるほど感銘を受ける内容が詰まった超絶濃厚なお話でした。
本当ならば、全ての津山市民の皆さまにも聞いていただきたいくらい。
圧倒的な熱量を感じた、熱い話だったと、他の皆さまが言ってくださったことがとても嬉しかったです。キーワードとして挙げられるものがたくさんありましたが…個人的に最も強く印象に残ったのはやっぱり、「共創」の姿勢でした。行政主導で市民が協力する形ではなく、課題を共に考え、共に動く関係性を築くことを目指しているということです。
そもそも市長だけ、約400名の市役所職員だけで地域課題を解決しろなんてことは無理だからこそ…民間企業や市民の皆さまのチカラをそこに積極的に貸そうと思っていただけるような仕組みづくりや、雰囲気を醸成していくことの重要性を説いてくださいました。

働き方改革とDXの融合
古賀市が全国から注目を集める理由の一つが、大胆な働き方改革。
職員の皆さまの勤務時間を見直し、出勤時間を早めたり遅めたりすることで退勤時間を調整するフレックスタイム制(6:30〜10:30出勤、15:00〜19:00退勤)を導入しています。しかも”理由なんて何でも良い”とのことで…圧倒的にユーザーフレンドリーな、使いやすい制度設計になっています。育児や介護などは当然ながら、ジムに早く行きたいからとか、ライブに行くためだとか…何だって構わない、それぞれに優先したいものがあるんだからとのことでした。テレワークも市長みずから積極推進しており、徐々に増えてきているとのことです。
そして、市民窓口の受付対応時間を従来より90分短い「9:00〜16:00」とし、その分を企画・改善・調整などの政策立案を含めたクリエイティブな仕事をする時間に充てていることは、紹介せざるを得ないポイントです。限られた時間を、より創造的に使うことで、最終的に市民利益に繋げていく…導入にあたってのハレーションがゼロだったはずはありませんが、丁寧に説明し続けることで、市民そして議会にも納得してもらい、実際に色々と伺いましたが単に受付時間を短くするだけでなく、実際に成果として示せるような取り組みを進めておられるとのことでした。
ま、自分みたいな議員が「成果を数字で示せ!」とか言いかねないですからね!

さらに、3年連続で男性職員の育児休業取得率100%を実現。
津山市では令和6年度で23.9%にとどまっています。平均取得期間は大体1か月ほどとのことで、上司も積極的に取得を推奨しており、取得期間を長くするフェーズに入っていると言われていました。制度はどこにでもあるけれど、使える雰囲気がなければ意味がないわけで…就任したばかりの際には10%前後だった状況をここまで改善し続けている市長の言葉には、強い説得力がありました。
自分自身が抜けると仕事が回らなくなる…そういう意識で仕事に向き合うことは重要で、ご自身もそうした気持ちで向き合っていると言われつつ、本当にそうなっているのであれば、それは組織のガバナンスの問題とまで言われていました。それくらいの強い意思で取り組んでこられたのだと伝わってきました。
庁内では完全ペーパーレス化を実現し、決裁も資料もすべてデジタル。
コロナ禍の際に実現したため、今では徹底されているとのことでした。そのため、各部局の皆さまの席はもちろん、市長室にも積み重ねられた重要書類などはないわけです。通常、市長室には扱いに注意を要するような紙資料も置いてあるように思われるわけですが、こうした取り組みを中途半端に終わらせず徹底することで、ついには市長室を、市長不在時には誰でも使えるシェアスペース化してしまっています。

公共財産はシェアすることで効果的、効率的に活用する!
シェアリングエコノミーの考え方も、“トップみずからが象徴になる”という徹底ぶりで…非常にご多忙で市長室を開けがちな田辺市長の不在時には、若手も含めた職員の皆さまが会議などで実際に利用されているようです。アイキャッチ画像を見ていただくだけでも伝わる通り…田辺市長は雰囲気づくりもメチャクチャ上手であることは疑う余地がありませんが…こうして職員の皆さまが市長室に気軽に来れるような仕掛けを打てること、市長室で仕事ができるという特別な体験をシェアしてしまえること自体が、もはや驚愕すべき姿勢です。
DXの本質は「人を幸せにする手段」
DXは目的ではなく手段と議会でも言い続けてきているように…デジタル技術の活用が単なるデジタル化にとどまらず、トランスフォーメーション、変革に繋がっているかどうか、つまり形よりも中身があるかどうかが大切であるわけですが、古賀市の様々な興味深い施策は枚挙にいとまがなく…津山市でも即、真似させていただくべきでしょと感じたものも幾つもありました。一例を挙げるだけでも…
・成人式受付をQRコード化 → 9割以上が利用。データが取れるので翌年の配置最適化などにも活用可能。
・各種証明書のコンビニ交付促進 → 10円キャンペーンの実施でキャンペーン終了後の普及を定着化。
・RPA導入で事務を自動化 → 職員さんが自走するプログラムを組み、年間数百時間の業務時間削減に成功。
いずれも“壮大な計画書”があって何年もかけて進められたものではなく、現場職員の皆さまが提案し、試行から広げていったものだとのこと…DXは社会的に見てもものすごい速度で進んでいることなのだから、“推進室の仕事”ではなく、皆が“課題をデジタルで解く”意識を持ち、取り組んでいく姿勢が肝要なのだと理解しました。

教育・子育てを最優先に据える政治判断
「子どもを真ん中に置く」――これがチルドレンファーストを掲げる田辺市長、そして古賀市の行政運営の原則。
象徴的なエピソードがありました。古賀市の乳幼児と保護者の居場所である「でんでん虫」。コロナ禍でも閉鎖せず、様々な感染対策を講じながら運営を継続されたとのことでした。のちの取材を経て、明確に言語化されていましたが…虐待や孤立のサインは現場でしか気づけないからこそ“閉めない”という決断をしたという姿勢には、現場を預かる行政トップとしての覚悟が滲んでいたと思います。私自身、児童虐待対策や孤独対策に取り組み続けているからこそ、メチャクチャ響いた話でした。
また「制度に温もりを添える工夫」の徹底には職員の皆さまの声が役立っているという話も、とても心に残りました。子どもたちも保護者と同じく様々で、私自身も人の心の機微には気をつかっているつもりではあるのですが、本当に誰一人取り残さないように取り組んでいくのであれば、自分自身だけでは気づけないことがることも受け止めなくてはならないことを、改めて痛感しました。だからこそ、首長や議員、管理職などの立場にある者は意見を言っていただきやすい人間であることが求められると思います。
また、子どもたちや若者を“対象”にせず、“当事者”として、政策決定や実践に彼ら自身の感覚を取り入れることが重要なのだということも改めて感じました。
私たちには想像力が必要不可欠です。

越境する公共と地域資源の再生
古賀市では地方自治体行政の枠を越えるかのような発想も随所に見られると感じます。
・コロナ禍で経営が厳しくなった温泉旅館を、コワーキングスペースやサテライトオフィスへと再生。
・公共施設等連絡バスを隣の新宮町まで延伸し、生活圏単位で交通設計(費用負担は古賀市のみ)。
・民間企業・金融機関などと協働し、国や県の熱い視線も浴びつつ、脱炭素カルテを作成。
・外国籍市民との協働を当事者の声に耳を傾けつつ、交流を柱に日本語教育の共創などを推進。
行政の手が届かないところを、共創で繋ぐ。
古賀市の改革姿勢はこう言えるのではないかなと思います。田辺市長を前に圧倒的改革力などと書いている名刺を渡すのは恥ずかしい(もちろん本当は以前交換しているからですよ!)ので…私だけは名刺交換をしませんでしたが、想像以上に熱い話を聞かせてくださったことに感謝です。
後半戦は教育委員会の皆さまからの説明でした。
視察テーマは、小中学校2学期制・水泳事業の民間委託に関してでした。



教育委員会からは7名、古賀市議会の文教厚生常任委員会委員長の古賀議員と、議会事務局職員の方…合計9名で私たち7名のために時間をとっていただき…市長の理念とも連動した教育行政の説明が伺えました。
古賀市で全小中学校で採用されている2学期制は、単に「学期を減らして業務を軽くする」ことが目的ではなく、子どもたちの学びと教員の働き方、両方を見直すための制度として導入されたことが強調されていました。
導入経緯、教育効果と現場の声など
学期区切りによる通知表作成・行事準備の過密化などが課題になる中、長期休業を減らして学びのリズムを安定させることも狙いだったそうで、一部校での試行を経て、教職員・保護者・児童生徒の意見を踏まえながら、段階的に全市立小中学校へ2学期制を広げていったようです。
評価の機会が減ったことで、子どもの成長を長期的に見通して支援できるようになり、教員にとっても、通知表や成績処理の事務負担が軽減…要はその分、クリエイティブな仕事に向き合えるわけです。3学期制の頃よりも授業時数の計画が立てやすく、“授業を深める時間”を確保できるようになったとのことで、今では全方位の皆さまにとても喜んでいただけているとのことでした。これは学校教職員だけでなく、保護者、そして児童生徒との三方よしとすることを意識した働き方改革なのです。
以前、私自身が本会議で紹介させていただいたこともある…夏休みを短くして毎日の授業時数を減らす取り組みについても…“子ども中心の時間設計”でもあることを強調されていました。教育長ご自身が子どもたちから直接聞いた話として、夏休みが長いよりも現行の古賀市のやり方の方が好ましいという声が多いことも紹介されました。
学校水泳事業の「民間委託」について
続けて説明があったのが、学校プールを廃止して、民間屋内プールでの水泳授業を委託実施している事例です。この取り組みは昨今、古賀市の教育改革の中でも特に注目されるものの一つとして紹介されました。市長のお話との親和性も非常に高い内容でした。
小中学校の多くでプールが老朽化・維持費が高騰している現状は津山市にもあります。

夏季の高温化の影響などで、授業実施が年々難しくなっています。
指導・監視に伴う教員負担も大きく、安全管理上のリスクも指摘されている中で、古賀市は、「教育の質」「安全性」「財政効率」の3つの観点から再構築を検討…そして市内のスポーツクラブと連携、民間プールでの授業委託に踏み切ったとのことでした。
指導は民間インストラクターが担当し、教員はサポートに回る…天候に左右されず、プールの水温・衛生環境も良い状態で保たれている民間プールの積極的な活用は、良いことづくめにも思えます。ただ移動時間も学習機会として位置づけ児童はバスで安全に送迎しているとのことで、広い津山市では民間プールの数などを考えても古賀市同様のアプローチは現実的には難しいと感じざるを得ませんでした。水泳授業の中止・延期がなくなり、学習機会確保にも繋がり、財政的にもプール維持管理費+補修費の削減効果が顕著で良い取り組みだと思うのですが、津山ですべきこと、できることを考えていかねばなりません。
質を落とさず安全性や効率性を高めるため、教育委員会や学校などでもしっかり考えられていることが伝わってきました。教育分野においても市長の掲げるチルドレンファーストの哲学が息づいており、2学期制は時間配分の見直し、水泳事業民間委託は学びの場の見直し…いずれも”固定観念を手放した挑戦”という点が共通しています。
挑戦を後押ししているのが、「共創」の姿勢であることは明らか。


後半パートにおいても民間のチカラを積極的に取り入れていこうとするスタンスが感じられました。そーゆー意味でも、いわゆる公民連携は津山市でもさらに強く打ち出していかねばならない姿勢だと改めて思いました。
田辺市長、そして教育委員会をはじめ、古賀市役所の皆さま…有難うございました!
本日はこんなところで。それでは、また明日!