答えは一つじゃないが哲学は見えてきた?佐藤まさたか東村山市議の講話から考える議会報告会どうする問題。

未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。

昨日の記事でも少し触れましたが…12月26日19時から、ローカル・マニフェスト推進連盟(通称LM)による会員定例会を開催しました。今回のテーマは、全国どこの議会でも一度は…と言うか、何度でも揉めるやつかもしれません。

「議会報告会をどうしよう?~住民にも議会にも最適な工夫を探る~」

こんなタイトルで開かれた今回の企画は60名ほどの申し込みをいただき、オンラインと国立事務所とのハイブリッド開催の形で実施されました。私自身もオンライン参戦です。

議会報告会って…実態はまぁまぁ泥くさい。

「人が来ない」「同じ人しか来ない」「声が大きい人に引っ張られる」「議員がやりたがらない」などなど、だいたい日本中どこの議会でも同じような、胃が痛くなるような単語が並びまして…やらなくても良いとか、開催回数を減らしても良いのではないか的な話になりがちで…津山市議会でも例外ではなく、現在は出前懇談会という形での実施のみです。

今回の講師は佐藤まさたか東村山市議(6期目・副議長)でした。

無所属で活動を続けられつつ、現在6期目で副議長。さらにマニフェスト大賞でも複数の受賞歴がある政策提言と実務の両面ともに優れた先輩で、LM関係の仲間の中でも私以外にも多くの議員のリスペクトを集める方の一人と言って良いと思います。

東村山市議会は、2014年から原則“年4回”の議会報告会を継続してきています。

その積み重ねは、もはや”継続によって身につけられた筋肉”みたいな領域だなと思いながら話を伺っていました。”筋トレは裏切らない”なんて表現を聞いたことがない人でも、継続は力なりと言えばご理解いただけるはずですが…12年にわたる“実践の山”をベースに、内容がどう変わってきたのか、議会内の空気はどう動いたのか、住民の皆さまの反応がどうだったのかなどを、具体的な運用プロセスも込みで共有していただきました。

結果として、全国の議員が関心を寄せるテーマだったこともあり、参加申し込みは年末の忙しい時期にも関わらず60名規模に膨らみました。「同じような悩みを抱える議員、議会が全国にこんなにあるんだ…」という変な安心感と、ちょっとした絶望感が同時に押し寄せるよう不思議な心持ちで話を伺っていました。

最初は「報告重視」→徐々に「意見交換の充実」へ

まさたかさんの話は気取らずざっくばらんで、終始和やかな雰囲気の中で進められました。印象的だったポイントの一つが、東村山においても報告会は最初から“今っぽい形”だったわけではないという点。

初期は、いわゆる委員長報告っぽい、きっちり報告寄りだったようですが、続けていく中でだんだんと…

報告だけだと、場が硬い。
→硬いと、初参加の人が喋れない。
→喋れないと、結局“声の大きい常連さんだけの場”になってしまう。
→結果、せっかく初めて参加した方々の満足度が向上しない。

…という感じで、問題が顕在化していったようです。そこで、報告はギュッと圧縮しつつ、「意見交換の時間を厚くする」という方向へ、設計思想が移っていったそうです。

形式も徐々に崩していく:対面→グループ→サークル

形式も試行錯誤の連続だったようでしたが、様々な試みを行ってこられた歴史を、わざわざご用意くださった写真付きの資料でわかりやすくご説明くださいました。クローズドの内々の会での資料なので共有は控えますが、興味のある地方議員の方は是非ご連絡ください。私自身も役員を務めさせていただいているローカル・マニフェスト推進連盟の定例会の内容は、今回に限らず非常に勉強になりますので超オススメ!

ごく一般的な対面型でスタートした報告会を、2015年の改選後からはグループ型を原則にして、より住民意見を聞き取りやすい、発言がしやすい形へとシフトしていったそうです。さらに、サークル型なども試行(ボールを回して持った人が話す、みたいなやり方)しているとのこと。

要は、「議会側が話す会」から「住民と一緒に場を作る会」へ、徐々に変えていったということ。

ここは重要なポイントだと思っています。議会報告会がうまくいかない時って、テーマが悪かった、広報が足りなかった、会場が微妙だったみたいな話になりがちなんですが…実は形式が空気を作る部分も大きいと感じています。

コロナ禍が背中を押したオンライン併用…Zoomは“増員装置”じゃなく“参加可能性の拡張”

オンライン対応も、東村山市議会ではかなり早い段階から試しています。

今では 会場+Zoomの併用が基本になっています。

ここでの語りがリアルで参考になるものでした。YouTube録画配信だけだと、双方向じゃないわけです。Zoomにすることで、「参加できる人」が増えるわけです。それが一人でも二人でも、増えたら良いじゃないかという姿勢は大いに見習わなくてはならないと感じた点です。

障がいがある方介護に向き合っている方何らかの事情で外出が難しい家庭の方や、いきなり足を運ぶのは少し億劫だけど“まずちょっと覗いてみたい”層など…参加ニーズはあるわけです。

議会報告会って、意見聴取を重んじるとどうしても「発言できる人向け」に設計されがちだけど…Zoomは”発言しない参加”も成立させてくれるわけで…この整理は、今後の津山市議会での取り組みはもちろん、今後の活動全般においても大いに参考になる感覚でした。

“継続の裏打ち”は、精神論じゃなくてルールだった

今回、最も凄いなと感じたのがこの点です。

東村山では、議会基本条例に加えて、別途 「議会報告会等に関する実施要項」を整備し、そこで原則年4回開催を明記しているとのこと。

条例本文に「やる」と書いてあっても…回数が曖昧だと、そのうち誰かが「年2回でもよくない?」「年1回でよくない?」「ていうか、やる意味ある?」などと言い出すリスクがあるわけです。一度“年4回”と書いてしまえば、変えるにもそれなりの議論と意思決定が必要になるわけで、そのために事前に奔走されたという話を軽くされていましたが、実際は相当に大変な根回しだったであろうことは想像に難くありません。

”継続を支えるのは制度設計と規範”であること…そして”段取りの重要性”を改めて示していただいたと受け止めています。

開催前に一週間の「駅頭PR」:集客よりも“議会のチーム力”が育つ

東村山の取り組みの特徴として、開催の一週間前に、議員全員で駅頭や街頭でPR活動をするという話もありました。

正直、チラシ配ったからって参加者が爆増するわけじゃないとのことでしたが、議会が党派や会派を超えて“同じのぼりを立てる”ことの意義が超絶に大きなものであることは、議会を理解している人であればあるほどに深くわかっていただけるのではないでしょうか?

「議会としてやっている」ことが、住民の目に入るわけです。そしてそれは間違いなく、議員同士にも効くはずです。

つまり…“チームとしての議会”を体で覚える経験になる。

ここは単に”報告会の集客テク”じゃなく、議会改革のポイントだなと感じました。

質問が止まらない:全国の議会が抱える悩みが噴出

後半の質疑応答がまた濃かったのですが、そこまで全て共有しては会員制を敷いている意味がないので控えておきましょう。ただ終了時刻を過ぎても質問が尽きない状況で、それだけ答えが一つじゃないテーマだということの現れでもあったのかなと思います。

そんな会の最後、まさたかさんが示された課題提起が印象に残っています。

報告会を続けると有難いことに、ずっと来てくれる人が生まれる。
→その人たちは議会を理解し、発言力も強くなっていく。
→一方で初参加の人たちは知識も少なく、発言に抵抗がある人も少なくない。
→この”格差”が広がると、初参加の人が喋れない場になっていってしまう。

そこで必要になるのが、“常連でもない、初参加でもない”…言わば中間層の皆さまです。

例えば、議会サポーター制度とかモニター制度といった形で、”中間応援団のような存在”を活用していくという姿勢は東村山議会でも、まだ十分に実現できていない、と正直に言われつつ、次のステップとして触れられました。

議会報告会はイベントでなく”装置”だからこそ、設計が重要

今回の定例会を通じてのまとめですが…議会報告会は、エンタメイベントじゃないから、放っておいたなら人は来ないわけです。でも、“来ないからやめる”だと、議会はどんどん閉鎖的になるわけです。津山市議会が良い例…いや、悪い例ではないかと思います。

だからこそ…ルールで支え、形式で空気を作り、オンラインで参加可能性を拡張し、記録を残し、公開し続け、意見を委員会活動や政策研究に接続して、そして、住民側の中間層を育てていく…そーゆー姿勢が大切。このあたりを運用設計として積み上げてこられてきた東村山市議会の実践は、その現実と知恵が詰まった“参考書”みたいなものでした。

佐藤まさたかさん、改めて有難うございました!

事務局による良い感じのレポも公開されていますが、LM会員定例会ではこうした先進事例をなるべく生々しく共有し、悩みも含めて持ち寄る場として続けていきたいと私個人としても思うところです。終了後には望年会的交流も行いました。こうした機会も大切。

ちなみに次はコレ!

こちらもリスペクトする先輩…マエミキこと前泊美紀那覇市議のお話が楽しみ。視察中でリアルタイム視聴は難しいかもしれないけど、会員にはアーカイブ配信もありますので安心!

本日はこんなところで。それでは、また明日!

三浦 ひらく

三浦 ひらく -PROFILE-

世界を暮らしやすく楽しく変えるため、相棒ひらくマと一歩ずつでも現状改善していくために日夜ハゲむ、1978年生まれの岡山県津山市議会議員。選択肢の多い社会を目指し、政治も手段の一つと捉え、地域振興、多様性理解促進、生きづらさ解消、表現の自由を守るための活動、インフルエンザ脳症撲滅、臓器移植意思表示推奨などをライフワークとして活動している。