未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。
色々とあった昨日のことですが、メインイベント的に考えて予定調整までしていたのは、学びの多様化地方議員連盟による勉強会的なイベントに参加するためでした。結果的には講演の一部しか聞くことができず、楽しみにしていたディスカッション(ワークショップ)には参加できませんでしたが…思っていた以上に伺った話が示唆に富み、そして私自身の議員活動や日々の問題意識にも直結する内容でしたので、軽く整理して共有しておきます。

ちょっと色々とトラブルもあって、12時からの議連の臨時総会にオンラインで参加して、13時からのフォーラムは約1時間ほどで急遽抜けることになってしまったのが極めて残念でしたが、末冨芳先生のメチャクチャ熱いお話は余すところなく全て伺うことができました。こども家庭庁の鈴木太地主査のお話が始まってすぐに失礼してしまったので、アーカイブでしっかり勉強させていただくつもりでいます。
「学びの多様化フォーラム」と題された今回のフォーラムは、学びの多様化地方議員連盟の主催で行われました。私自身も所属させていただいているこの議連について、ちょうど一年ほど前の話になりますが、キックオフの際に当ブログでも記事を書かせていただいています。
その後、津山市では学びの多様化学校→学びの多様化学級騒動などもありました。この議連からは色々と継続的に学ばせていただいています。子どもたちの多様な学びのあり方を全国の自治体レベルから考え、現場に落とし込んでいくことを目的に活動しているネットワークなのです。総会の内容は内部の話なので置いておきますが、フォーラムは一般の方にも参加いただける形で開催され、ほぼ末冨先生の話しか聞いていないに等しい約1時間の参加でしたが、とても興味深いポイントが幾つもありました。

開会挨拶は熊本市議会議員である、議連の田中あつお会長によるもので、ご自身の小中学校時代の原体験から「子どもたちに寄り添う政治を実現したい」という思いで政治を志した熱い思いを語られました。本日のアイキャッチ画像は、直前の臨時総会で正式に発表されたばかりの議連のロゴですが…「子どものミカタが学びをひろげる」というコピーには、子どもに寄り添う”味方”としての大人の存在と、”見方”つまりは視点の多様性という二つの意味が込められています。深く共感できる、素晴らしい表現だと感じています。
そして自分にとっては名実共にメインとなったのが、日本大学文理学部教育学科教授・末冨芳(すえとみかおり)先生による講演でした。
「子ども基本法・子どもの権利をどう実現するか」というタイトル。
先生のご厚意で、講演に使用されたされたボリューミーな資料も議連メンバーには共有いただいていますので、津山市の現場でも役立てるべく努めていくべく、当然に有効に活用していく所存ですが、資料そのものの公開やシェアはできませんので、ここでは講話内容を中心に紹介させていただきます。

子ども基本法がなぜ必要だったのか
「なぜ子ども基本法が制定されたのか」という点から話が始められました。日本は1994年に国連の子どもの権利条約を批准しています。国際的に見るとかなり遅い(条約採択は1989年で、日本は158番目の締結国)という背景もあります。そして、その内容を国内法に反映する取り組みは長らく進まず、国連からも繰り返し勧告を受けてきました。
転機となったのはコロナ禍。
公園の遊具がテープで封鎖されるなどして、子どもたちの「遊ぶ権利」があっさり奪われた光景。一斉休校によって、学びと居場所が同時に失われた現実を目の当たりにして、いかに子どもたちの権利が簡単に蹂躙されるかを改めて実感されたとのことでした。
「こんなにも簡単に子どもの権利は踏みにじられてしまうのか」
先生自身、深い怒りと悲しみを覚えたと語られました。子どもを守るためには大人の善意に頼るのではなく、法律で縛るしかないのではないか。そこで、議員立法による「子ども基本法」が始動したのです。

子ども基本法の特徴
法律の大きな特徴が3つあります。
・すべての子どもを対象にしている
国連による子どもの権利条約では子どもは18歳未満と規定されていますが、日本の法律では年齢規定を設けず、支援の線引きを防ぐことを企図しています。
・権利の包括的な網羅
愛されること、守られること、教育を受けること、健康に育つこと…基礎的な権利を一つひとつ明記しました。一度その哲学に触れた上で、改めて条文を読んでみていただきたいです。
・子どもの参画を保障
子どもが意見を表明し、社会を共につくる存在であることを法律に明記しています。意見を「聞く」ではなく「尊重する」ことを義務づけていることがポイントだと思います。
さらに「子どもの最善の利益を優先する」ことを明文化しています。これが後に「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)」を成立に導く突破口となった点も強調されました。
罪を犯した人間であろうともリトライ、更生を応援したいというのが私の基本的立場ではありますが…性的虐待は卑劣そのものの犯罪であり、絶対に許してはならない行為です。この際、守られるべきが罪を犯した大人なのか、性暴力を受けた側の子どもなのかは、考えるまでもないことだと思っています。

日本の子どもたちを取り巻く厳しい現実
法律はできた…しかし現実としては依然として厳しい状況が続いている。
末冨先生は数多くのデータを示しながら課題を解説されました。今年発表されたユニセフのレポートカード19によると、日本の15歳の精神的幸福度は38か国中32位です。この数値は特に女子が相対的に低いことや、SNSを一日6時間以上利用する層、低所得層やいじめ被害者の状況が深刻であることなどが触れられました。
子どもたちの自殺率の高止まり…15〜19歳の1,000人に1人がみずから命を絶っている現実(こちらは男子の割合が高い)や、「自分の力で社会を変えられると思う」と答えた日本の18歳は45.8%しかいない(他国では7〜8割に達している)ことなど、日本の自己効力感の低さは際立っていることが説明されました。
貧困に苦しむ子どもたちの学力格差、女子は世界最高水準の数学スコアを出してもSTEM分野に進みにくいというジェンダーバイアスなどに加え、増え続ける児童虐待相談件数と川上対策(予防的支援)が不十分であることへの警鐘など、激しく頷かざるを得ないお話を聞かせていただきました。
不登校児童生徒は長期欠席を含めると実質40万人を超える規模になっていると考えておられることや、学校以外の居場所の乏しさが孤立を招いていることについても言及がありました。
改めて数字を並べるだけでも、胸が詰まりそうになりますが…目を逸らしてはならない現実です。

子どもの権利をどう教えるか
権利は”わがまま”ではない。
この点を先生は何度も強調されていました。例えば…生活保護などについて論じる文脈において、私自身もよくこうした発言をします。
そもそも権利って、何でしょう?
子どもたちに上手に説明することができるでしょうか?皆が下を向いてしまうような問い掛けがなされた後に、人権教育の一例として、大阪の私立小学校での実践例が紹介されました。
それによると権利とは…
・自分がやりたいことができること
・したくないことは、しなくてもいいこと」
・してほしいことを「して!」と言えること
・みんな同じことができること
こう教えることで、子どもたちはむしろ感謝や安心感を持ち、主体的に行動するようになるのだという話を伺いました。
さらに世界人権宣言第1条を引きつつ、「人は生まれながらに自由で平等であり、理性と良心を授けられている」との定義が人権を考える上で最も大事だと思われていると言われたのですが、イギリスの教育者の言葉として紹介してくださった話も印象的でした。人権=human rightsについて「人は右手で物を握るように、生まれながらに権利を握って生まれてくる」のだと…誰もが当たり前に持っているものとして権利を理解させる説明をされていたというエピソードで、スッと心に入りました。

自治体の「子ども計画」が未来を拓く
子ども基本法に基づき、各自治体で「子ども計画」を策定する動きが始まっています。
津山ではまだまだのようですが…全国各地の先進的な事例も伺いました。「一緒に作った街は消えない」という響く言葉がありましたが、子どもや若者が地域計画づくりに関わることで、愛着が生まれ、将来地域を離れてもまた戻ってきてくれることも期待できます。
人口減少時代にこそ必要な発想です
子ども基本法や子どもの権利条約への理解を、学習指導要領中に盛り込むことをはじめ、海外事例に学びつつ、日本版の仕組みを作り上げるための具体的なビジョンや方策が、最後のまとめとして幾つも語られました。私たち議員には大きな責任と果たすべき役割があることを、改めて認識しました。

まとめにかえて
末冨先生の講演は、単なる理念や空論ではなく、データに裏打ちされた危機感と具体的な教育実践・政策提案がセットになっている非常に参考になるお話でした。
「子どもの最善の利益を優先する」ことを大人の社会がどこまで本気でやれるのか…それこそが日本社会の未来を左右する分岐点だと感じます。
本来は超絶当たり前にやるべき話なんですけどね。
全国の先進事例や法制度の趣旨を背景も含めてしっかりと学び、議会の場で俎上に載せて、子どもたち自身の声を反映させていかねばならない…改めて職責を自覚させられるフォーラムでした。
関係各位、有難うございました!

本日はこんなところで。それでは、また明日!