未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。
今日は、9月議会の一般質問でも取り上げたテーマについて、現場の皆さまが市長に対して要望書を提出する現場に同行させていただきました。
城西エリアの重要伝統的建造物群保存地区内にある14の社寺、全ての皆さまの総意ということでまとめていただいた要望内容を、市に対して提示したということです。いよいよ”現場の総意”がカタチとして示されたわけで、津山市がどのように受け止め、対応していくのかは議会においてもしっかり確認する必要があると考えていますし、今後も注視していくつもりでいます。
”守るための制度”が、現場を苦しめていては話になりません。
津山市の城西地区は、令和2年に城東地区に続いて市内2つ目の”重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)”に選定されたエリアです。出雲街道沿いの商家町と、津山城下最大級の寺町がセットになった、まさに“文化都市・津山”を象徴する地域の一つであり、そして上の動画からも明らかなように、谷口市長としてもこの指定を受けたこと自体を大きな成果だと自認しているわけです。
昭和50年の文化財保護法改正を契機に、城下町・宿場町・門前町など、各地に残る歴史的な集落や町並みを守るための仕組みとして”伝統的建造物群保存地区”という制度が設けられました。
”守るため”の制度なのです。
重伝建指定は、まずは市町村が、地域の中から保存すべき区域を”伝統的建造物群保存地区”として定め、保存条例に基づいて、建物の修理や景観の保全、防災対策などをどのように進めていくかを示した”保存活用計画”を作ることから始まります。その上で、国(文化庁)は市町村からの申出を受け取り、日本全体の中でも特に価値が高いと判断した地区を”重要伝統的建造物群保存地区”として選定するというのが流れです。
こうした市町村の取り組みを支えるため、文化庁や都道府県教育委員会は、保存や活用の進め方について指導・助言を行うとともに、建造物の修理・修景や防災設備の整備、案内板などの設置事業といった取り組みに対して補助を行い、加えて税制上の優遇措置も用意することで、地区の保全と活用を後押ししている…”ハズ”なのですが、その支援があまりにも実際は機能していない、あるいは支援が実情と乖離していて支援になっていない…というような実情があるわけです。
守るためのはずの制度が、守るべき社寺を苦しめているとすら言える状況。
だからこそ、重伝建エリア内の社寺が一丸となって、今回のようなお願いをする事態になったのです。
重伝建制度自体は、歴史ある町並みを次の世代に残していくための制度であることは間違いありませんが…一方で、本堂や山門など、社寺特有の大規模な木造建築、庫裏など住職や家族が実際に暮らす住まい、境内全体を含めた維持・管理コストと、一般住宅や町家を前提にしたような”画一的な基準”とのギャップが、じわじわとお寺・神社の皆さまを追い詰めてきた…というのが、現場から私のところへ届いていた生の声でした。
今日はプレスリリースを受けて、NHKさん、山陽新聞さん、津山朝日新聞さんが取材に入ってくださり、すでに夕刻のニュースで早速しっかり流してくださったと聞いています。各方面からリアクションも届いています。
・重伝建指定の前後で、寺社に対する説明が十分だったとは言えないのではないか?
・特殊な工法・資材が必要で、高額になりがちな寺社の修理を、一般住宅と同じ基準で考えるのは現実離れしているのではないか?
・「許可基準に適合していない申請がない=問題ない」ではなく、そもそも声を上げにくい状況になっているのではないか?
9月議会での私のこうした質問に対して市側は、「これまで以上に丁寧な説明に努めたい」「住民の皆様と共に、歴史的風致を後世に継承していくまちづくりを進める」といった趣旨の答弁をされています。私は最後に、「これまで以上の丁寧な対応、そしてできる限り柔軟な対応を強くお願い」して、この件への質問を終えていますが、当然それで終わりではありません。
むしろここからがスタートだろうと、そう考えていました。
14社寺がまとまっての要望です。
これは個々の寺がバラバラに文句を言っているような話ではなく、城西地区重伝建エリア内の社寺すべてが協議を重ねたうえでの“総意”なのですから、市長をはじめとした関係各位には重く受け止めていただかねばなりません。
市長・観光文化部長・文化課長らが揃って対応してくださる場に、私も同席させていただきました。皆さまをリラックスさせる役割は、いつも通り(?)果たすことができたのではないかと、最後の良い表情の一枚を見て思っています。
当局側で気をつかってくださり、私の席まで用意してくださっていたのですが…立場としてはあくまで“橋渡し役”であり“黒子役”ですので、座らせていただくことなく報道の皆さまに混じり、”写真を撮りまくる係”を務めさせていただきました。ただ9月議会でのやり取りが一つの契機となって、現場の動きとしっかり繋がったことは、議員として正直嬉しいポイントでもあります。
長くなるので、要望の具体的な中身にはここでは触れませんが…。
いずれも、至極ごもっともな内容だと感じられるものでした。
こうした…当たり前の話が当たり前になされていないと感じられるようなケースに関しては、どの地域のどんな課題であろうと、必要に応じて現状改善のためのお手伝いをさせていただきますので…いつでも何でも遠慮なく、お声掛けください!
市長や担当部局からは「言われていること、その通りだと思う部分がある」「価値ある建築物を長く残していけるよう、共によりよい方策を検討したい」「できるかぎり寺や神社の実情に沿った制度運用をしていきたい」といった趣旨のコメントがありました。
市長は9月議会でも、「歴史的・文化的価値と地域活性化の両方にとって、重伝建は重要な成果である」との認識を改めて示されたうえで、これまで以上に丁寧な説明と、住民と共に進めるまちづくりを進めると答弁されているわけです。
今回の要望書提出だけで、すぐに何かが劇的に変わるわけではないことはわかりきっていますが…保存審議会のあり方やガイドライン等の基準の見直し、助成制度の再設計などが必要な分野は実はこの件だけではないことを関係各位に認識していただく意味でも、意義ある一日だったと感じています。
今回の要望書は「重伝建は要らないからやめてくれ」という話ではなく…「本来守るべき社寺と地域の営みを、ちゃんと守れるような制度にしてほしい」という前向きな提案だと、私は受け止めていますし…代表でインタビューを受けられた長安寺の久保副住職はとても良い受け答えをされていたと感じていますし、笠尾観光文化部長のコメントも期待が持てるものでしたので、良い方向に進むように願っています。
双方とも、「ともに」というフレーズを用いてくださったことが印象的でした。
制度と現場の間にギャップが生まれるのは、正直どこの分野でもありがちな話。
それでも…現場の皆さんが声を上げ、そこに必要なら議会が関わり、行政もきちんと向き合うことで、少しずつギャップを埋めていくことはできるはずです。14社寺の皆さまが「総意」として要望を取りまとめてくださったこと、市長が正面から受け止めてくださったことに、心から敬意を表したいと思います。
そして何より…一昨日の文化センターの件と同様に、城西の町並みやお寺・神社は、津山の誇るべき“宝”の一つ。
まだ歩いたことがないという方は、この機会にぜひ一度、ゆっくりまち歩きをしてみてください。きっと…その一歩一歩が、こうした守るべき場所を未来へと繋いでいくためのチカラになると、私は信じています。
本日はこんなところで。それでは、また明日!



