未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。
今日は日が昇る前に津山駅をスタートし…岐阜県可児市を訪問。
可児市と津山市は歴史友好都市縁組を結んでいます。夏には可児市から小学生の皆さまが来津してくださり、津山の子どもたちと交流したりされていましたし、先月までは津山郷土博物館においては特別展「歴史友好都市縁組40周年・30周年記念-土庄町と可児市と津山」と題された企画が催されていたりと、深い繋がりがあるのです。人口規模も津山市と近く、2回行かせていただいているだけですが…まちの雰囲気も個人的にはとても好きです。
議会には圧倒的な差があるけどなッ!
先だっての決算審査においても、可児市議会で使われている資料などは素晴らしい事例として紹介させていただき、津山市においてもより効果的・効率的な議論を進めていくために、こうしたやり方を取り入れていくべきだと提言しています。
会派のメンバーと共に昨年2月に訪問させていただいていますが、特に現在、何と4度目の議長を務められている川上文浩議員には、個人的にも様々な面で勉強させていただいているところ。
そんな可児市議会で開催された”さくら議会”を傍聴するため、6時間近くかけて訪問。
議会を見て泣くようなことがあるとは…。
私がお世辞や社交辞令を言うキャラではないことは、当ブログの熱心な読者ではなくても少しでも面識がある方は存じてくださっているかもしれませんので、信じていただけるとは思いますが…本当に素晴らしい内容で、端的に表現できる語彙力がありませんが…超良かったです。企画自体は1時間半ほどで終了しましたが…片道6時間を費やした価値が十二分にある時間でした。
議会はどうしても“難しい話をする場所”として敬遠されがちですが、今日は、その真逆を見せていただいたような感じがしています。
議会が市民に近づこうとして、若い世代の皆さまが議場に座っている…これだけなら、若者議会とか高校生議会とか様々な名称で、多くの自治体で色々と取り組まれている”よくある話”かもしれません。
まぁ…それすら津山市議会では実現できていませんけどね。
ただ今回の若い皆さまは皆、様々な事情を抱えておられました。
公式サイトによると…参加された生徒の皆さまが在籍されている令和さくら高等学院は、特別な支援が必要な自閉症スペクトラム(アスペルガー、高機能自閉症、広汎性発達障害)、学習障害(書字障害、計算障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)などの発達課題のある生徒やひきこもり・不登校での高等学校卒業資格が困難な転入編入の生徒の受入れも対応できる公認心理士が常駐している通信制高校サポート校であり、小・中学校の6ヵ年で様々な困難に向き合ってきた子たちが集っていました。
そうした子たちが「決める側」として、迷いながら言葉を探す様子は、傍聴席から拝見しているだけの部外者にすぎない私の心を打つものがありました。子どもたちが自分たちで考え、それを個々に発露し、そして大人たち(可児市議会議員の皆さまが執行部席に座り、市長、教育長、議会事務局長をはじめ、執行部側の部長役として対応)が受け止めて、丁寧にまとめて、次に繋いでいくという流れはもはや、感動的ですらあったのです。
これこそ民主主義の現場だと感じるやり取りでした。
まず前半…「議会ってどんなところ?」を“体感”で伝える
第一部は、議会の仕組みや議場の説明から始まりました。議場についての案内の中には、スクリーンやカメラは「寝てない議員がいないかチェックするためじゃなくて、中継・録画して、市民に伝えるためなんです」的な説明もあり、ここで既に“可児市議会の姿勢”が伝わってきました。
また余談ですが、傍聴席からも撮影自由とご許可いただき、子どもたちの顔などが映り込んでも構わないとの許可も保護者からいただいているとのこと…これがどれだけ大変なことなのか…本当に頭が下がります。しかもこの会を開催しているのは定例会期間中で、翌日にも本会議がある状況。可児市議会、あまりにも凄過ぎます…。
さらに凄いのが、単なる仕組み説明で終わらない工夫。
市長は「提案する・実行する」立場で…議会はそれらを「決める・チェックする」立場であること…例えばこうした役割分担を、平易な言葉で噛み砕いて、しかも「じゃあ代表を選ぶのは誰?」「議員は何人?」みたいにクイズ形式で学べる形で進められていったので、場の空気が柔らかいままなんですよね。“教える”じゃなくて、“ともに理解を共有していく”感じで、決して独りよがりに進めていく感じじゃない点が素晴らしい!
また事前に子どもたちから出てきていた多くの質問に、各議員が的確で誠実かつ、ユーモラスに答える姿勢、それを絶妙に笑いも交えながら進めていく進行など、可児市議会のチームとしてのまとまりは非常に高次元で、圧倒されました。
例を挙げると…大型のショッピングモールが欲しいんだけど的な質問には、気持ちはわかりますがと意思を尊重しつつ、近隣自治体との兼ね合いや過去の経緯などを丁寧に説明し、実際には難しいという玉虫色ではないしっかりした答弁を返しておられました。それ以外にも複数あった可児市の具体的な課題についての問いだけでなく、議員の給料(報酬)についてや、市民意見聴取のプロセスなどについての生々しい質問にも、真正面から伝わりやすい平易な表現で、真摯に答えられるスタンスは、結局どっちやねんみたいな答弁が繰り返されるような議会とは全く別物でした。
キャッチボールがしっかりできているわけです。
見ていてもわかりやすいし、楽しい。こうした姿勢は本来当たり前かもしれませんが…少なくとも津山市議会の当たり前とは大きく乖離したもので、リスペクトを覚えざるを得ないものでした。
子どもたちにもきっと届いていたはずです。
後半が本番…「何かをやめる」模擬議会が、重くて尊かった
第二部は、架空の市(人口10万人規模)について話し合う設定でスタート。
可児市ではなく”えび市”というまちについての話です。
昔は税収があって財政的にも余裕があり、色々と整備してきたんだけど、人口減少・少子高齢化で税収も減って、国県の支援も先細りしてきて財政難なの…という、どこかで見たようなまちの設定で、議題としてミッションが掲げられるわけです。
「えび市を維持していくため、何かをやめないといけません。4つ提案します。皆で話し合って、最後に1つだけ、個々に決めてください!」
提案は以下の4つ…それぞれ担当部長役の議員から説明がありました。
①子ども医療費の助成制度を廃止
②お年寄り向け無料バスの廃止
③市立図書館を廃止
④温水プールの廃止
どれも、“なくなったら困る人がいる”ものばかり。
だからこそ、ここからの生徒たちの議論の様子…そして出てきた意見が、本当に胸に刺さったのです。
生徒の皆さまが発表された意見が、ちゃんと「議会」だった
素晴らしいなという感情を超えて、凄いなと感じた点がありました。
皆、すぐに断言しないんです。
「これが正解!」じゃなくて、迷いながらも、自分の言葉で理由を探して、絞り出すようにそれを発表してくれていたのです。その連鎖が続いていく過程は、問題を抱える子どもたちの当事者支援に長く携わらせていただいている身としては…ちょっともう、涙を堪えられるものではなかったというのが正直なところ。様々な考え方があることへの配慮は大人の議会でも一番難しいところかもしれませんし、自分自身にもまだまだ足りていないと感じる点でもあるので、大いに学ばせていただきました。
真っ直ぐな誠実さも見せていただきました。ある生徒は、「一つには決められなかった」と前置きしながら、子ども医療費助成か、高齢者向けのバス無償化か、そのどちらかを見直すべきではないかと思うという方向性を示されました。その理由がまた、“自分の損得”を考えてのものではなかった点も素晴らしかった。
税金は市全体から集められたお金だから、市全体のために使われるべき…誰かだけに偏りすぎる使い方から、見直した方が良いと思うという趣旨でした。
自分中心ではなく、一段引いた視点で「公共」をちゃんと扱っているのです。
採決に先立って、議場では様々な意見が飛び交いました。もはや実質上の討論です。
例えば温水プールを廃止するべきだという意見の中にコストを語られたものがありましたが、賛成意見の中にも、単に「お金がかかるからだけ」じゃなく、冬場も温水にするなら燃料費がかかる、水道代もかかる、湯冷めのような状況で体調を崩すかもしれないなど、維持費が重いだけじゃなく、健康面などでも指摘が入るなどしました。“どんな支出が発生しているのか”と“生活の実感”がセットになっていて、説得力があったように思います。
印象的だった図書館をめぐる議論:空気が変わった
図書館については、賛成・反対がはっきり分かれました。
賛成側から伝わってきたのは「スマホ普及」「デジタル化」の視点。若者の多くはデジタルブックに抵抗がなく、電子書籍で代用できると感じている実情も伝わってきました。こうした視点は公共施設の在り方を考えるうえで避けて通れない論点でもあります。
ただ反対意見が出た瞬間に、議場の空気が少し変わったように感じました。
「図書館がなくなると、中高生が受験勉強する場所がなくなる」
「本を借りるだけじゃなく、勉強の場、居場所なんだ」
そうなんですよね…図書館は貸本屋ではないのです。
“居場所”であり、“学びのインフラ”なのです。
ここが今日最も凄いなと感じた点で、同じ施設を見ているのに、ある人は「デジタル化の時代」と言い、ある人は「居場所が消える」と言うわけです…同じ対象を見ていても、機能の捉え方が違うからこそ、議論が生まれる。
そんな議会の”当たり前”を再認識させてくれた、さくら議会に心から感謝しています。
そして採決へ…結果以上にプロセスが尊い
最終的には”温水プール廃止”が最も多数になったのですが、今日の価値は結果だけではありませんでした。
意見が割れても相手を笑わず、敵視せず…理由を聞き、別の視点を出し、最後は決める。
このプロセスを、特別な支援が必要だとされている子どもたちが議場でやり切った。
リハーサルなどほぼないに等しく、事実上のぶっつけ本番だったと伺っていますが…ここに至るまでの過程も勝手に色々と想像し、眼頭が熱くなりました。
閉会前の大人たちの“まとめの言葉”が素晴らしすぎた件
我慢しようと耐えまくっていたのですが、ここからです…涙が堪えきれなくなったのは。
最後、誰に促されるでもなく自主的に…それでもポツポツと様子を見ながら一人ずつという感じで、全員ではありませんでしたが、次々と参加している生徒の皆さまが挙手されて、みずから意見を述べた後の採決を経て、場が熱を帯びた後、先生や議会の皆さまが、丁寧にまとめていくわけです。最後まで“感動的なイベントだった”と感じた、ここからの展開が圧巻でした。
市長役の言葉:議論を受け止める「重さ」
市長役を務められた澤野議員からは、議員(=生徒たち)の意見を受けての総括がありました。子ども医療費助成をなくしてしまうことは簡単だけれど、受診控えが起きて、重症化するようなことがあっては話にならないのではないかという意見が出たことや…図書館は本を借りるだけでなく、受験生や多様な人の居場所でもあるという声が出たことへの感謝と敬意を示されつつ…“削る”という決定には、見えにくい副作用があることを、真正面から言語化しておられました。そして最後には、議決に従うということの重要性にも言及…この「決めたことの責任」を背負う重さについての言葉があったからこそ、体験が“本物”になったのではないかと考えます。
学院長の言葉:生徒たちの背景と、今日の意味
続く学院長のご挨拶も、胸にきました。ここまで真剣に質問して考える展開は想像していなかったと言ったら怒られるかも…と照れられながら、しかし、その言葉には嘘がないのだなと伝わってくる率直な物言いで語られ始め、生徒たちが小学校・中学校を含めたこれまでの学校生活で抱えてきた困難(学習、人間関係、コミュニケーション等)にも触れながら、今日の経験が“社会に出る未来に向けた初めの一歩”になる、と結ばれていました。
私はこの瞬間…”議会が社会への架け橋になっている光景”を見た気がしました。
正直、今これを書きながら思い出してまた泣いています。これがどれだけ凄いことなのか、実感を伴って感じられる方は多くないだろうとは思うのですが…ここに至るまでの関係各位の努力や苦労がいかばかりであったか、どれだけの困難を乗り越えて実現した場であったのか…本当に行って良かった、傍聴であろうと立ち会わせていただけたことが光栄ですらある、素晴らしい時間でした。
議会側代表の言葉:対話の作法を、まっすぐ渡した
そして最後、可児市議会代表として川上議長の閉会挨拶がありました。「相手を否定するのではなく、受け入れながら議論を進める」「意見が違っても、人を批判してはいけない」「ダイアローグ、対話をしていけば、必ず何かが見えてくる」…こうした、綺麗ごとにも聞こえがちな言葉の数々が、今日ここでは綺麗ごとではなかったのです。
だって、目の前でそれを“実演”されていたわけですから!
だから、この挨拶も決して”大人からの説教”にならず、生徒たちにちゃんと届くわけです。
「今日のことを心にしまって、これから自立できるように自分を磨いていってほしい!」
気付いたら号泣ですよ…それは私だけでなかったはずです。
まとめ:こういう議会が増えたら政治は変わる、こういう機会が増えたら未来が変わる
政治に興味を持ってもらうことは本当に難しい…それは何年間も実践し続けてきている身としても、実感しています。ただ今日のさくら議会は、興味を持ってくださいと“お願いする”のではなく、興味が芽を出す体験を、ちゃんと用意されていた印象。
議会が市民の皆さまに近づいていく。
その重要性をこれでもかと突きつけられました。若い世代が言葉を放ち、大人がそれを受け止め、そして「対話で決める合議制の議会体験」を、実際にやる。議場でこれを見せてもらえた経験をツヤマノミライに必ず生かしていきます。
可児市議会、令和さくら学院関係各位、そして何より生徒の皆さま…有難うございました!
議会事務局の皆さまが撮影された公式サイト掲載の写真使用許可もいただき幸甚です。こうした温かく懐の深いまちと歴史友好都市縁組30周年を迎えられていることを、議会の末端に携わらせていていただいている身として光栄に思います。
長くなりましたが本日はこんなところで。それでは、また明日!






