未来拓く、みうらひらくです。
津山市議会議員、三浦ひらくです。
今日は、先日の6月定例議会閉会日、閉会後に会派ツヤマノチカラの3人のために開いていただいた勉強会の話。過日の水道局での勉強会同様に、田口議員が段取ってくれました。その概要を、インプットをより深めるためにもアウトプットしておきます。

今回は、債権管理室さんによる勉強会でした。
市が持っている”お金を回収する権利”、それがつまり”債権”です。
この言葉、普段の暮らしの中ではあまり耳にしないかもしれませんが…実は、メチャクチャ大事な概念ですし…誰にとっても関係がある話でもあります。議会閉会後というタイミングで、お疲れのところ申し訳ありませんでしたが…それこそ、次の9月定例会には決算審査もありますので、この分野の学びを深めておくことは必要不可欠です。現場の皆さんが債権とどう向き合っているのか、どんな困難があるのか…じっくりお話を伺ってきましたので、概要を共有させていただきます。
勉強会の冒頭では、地方公共団体が持っている債権について、以下のように分類されることが確認されました。
・強制徴収公債権
→ 法律・条例に基づき、市が差押えなどの強制力を行使できる債権
(例:市民税、介護保険料、国民健康保険料、下水道使用料など)
・非強制徴収公債権
→ 同じく法に基づくが、強制的な徴収権限を持たないもの
(例:緊急安全措置実費負担金、生活保護費や児童扶養手当などの返還金など)
・私債権
→ 契約などに基づき発生する、いわば“市と個人の約束”に基づく債権
(例:水道料金、市営住宅等使用料、奨学金返還金、生活改善資金貸付金など)

この分類、何が違うのかといえば…一言で表現すれば、”市が回収のために強制的な行動に出られるかどうか”です。
強制できるかどうかが、天と地の差を生みます。
例えば、税金の滞納がある場合…市は法に基づき、預金や給与などの差し押さえを行うことができます。ところが、水道料金や奨学金の返済滞納などに対しては、市は差し押さえることができません。それどころか、民間と同じように訴訟などの法的手続きを経なければならず、費用と手間がかかるだけでなく、回収できる見込みがほとんどないケースも非常に多いのが実態です。
津山市の収入未済額は、令和5年度決算ベースで約23.2億円にのぼります。収入未済額とは、本来は入ってくるはずだったのに、まだ入ってきていないお金の総額のことです。
簡単に言えば、津山市が”取りっぱぐれてるお金の合計”が23億円以上もあるってこと。
その内訳は、強制徴収公債権:約5.8億円、非強制徴収公債権:約0.3億円、私債権:約17.1億円です。
つまり、約74%が強制的に徴収できない債権なのです。

収入未済額は減ってきていますが、ずっと大半が回収に大変な手間やコストがかかる債権で占められているという現実がグラフから見て取れると思います。お金がないから払えないという人がいる一方で、払えるのに払っていない人もいるのも実際のところで…実際の対応には、諸々を総合的に考慮しての個別具体的な判断が必要で、非常に複雑かつデリケートな対応が求められている、難しい分野であることは、以前、生活保護に関するエントリーを書いた際にも少し触れた気がしますが…市民相談に向き合わせていただく中でも強く感じています。
さらに厄介なのが”時効”です。
債権には時効という制度があり、一定期間(原則5年)が経過すると、法的に請求できなくなるのです。
ただし、ここにも大きな違いがあります。
債権種別により、時効の適用のされ方に違いがあるのです。強制徴収公債権、非強制徴収公債権は時効成立後に自動的に債権が消滅します(援用不要)が、私債権の場合は相手方(債務者・保証人)が”払わない”と意思表示しなければ、債権がなくなることはないのです。
いわゆる”時効の援用”が必要だということです。

私債権は、相手の時効援用がなければ、市は債権を放棄することすらできません。
時効とは”一定期間が過ぎたら請求できなくなる”というルールですが、私債権の場合は勝手に自動でチャラになるわけじゃないということ。つまり、時効になっていても…債務者が「もう時効なんで払わなくていいはずです!」と主張しない限り、時効が成立していても、払う義務が残ったままなのです。援用できるのは債務者本人、または相続人や保証人などの関係者です。
私債権の場合は市が”もう回収できない”と判断しても、相手が援用してくれないと、放棄処理ができないという、超やっかいな仕組みなのです。
本人が亡くなっていたら、相続人全員から援用してもらわなきゃならないようなケースも考えられます。相続人を調べて連絡しなければなりませんし、相続放棄しているかどうかの確認も必要です。このように、放棄するにも一苦労どころか幾つもの苦労を積み重ねなくてはならないのが実情なのです。
時効の援用が得られないケースでも、債権管理条例などに基づいて”不能欠損処理”が可能となる場合があります。例えば、債務者・保証人の死亡および相続人の不存在・所在不明・連絡不能などや、訴訟費用が回収額を上回ると明らかに判断できる場合などです。取れないからあきらめるという単純な話ではなく、慎重な事実確認と手続きが求められる領域です。
会の中では「相手の特定に何か月もかかることもある」「手間に見合わない小額債権も多く、回収に二の足を踏む」「時効援用のお願いをする相手が既に亡くなっていることも多い」「正直に払ってくれる市民が損をするようなことは避けたい」などの声が聞かれました。制度上の制約も多い中で、それでも誠実に、地道に仕事を続けてくださっている職員の皆さまの苦労と誇りがにじむ言葉ばかりだった印象です。
個人的に特に気になったのは、「水道料金は私債権、下水道使用料は公債権」という扱いの違い。
現行制度上そうなることは当然に理解できるものの…どちらも生活に必要不可欠と言えるインフラであるにもかかわらず、徴収の権限が異なるという点はどうにも腑に落ちません。法的根拠や過去の判例の積み重ねに基づいているとはいえ、制度のアップデートが求められているタイミングなのではないかとも感じました。
債権管理がうまくいかないと、市の収入が減り、市民サービスの質や量に影響が出る可能性があります。
払うべきものをきちんと払ってもらう仕組みを整えること自体が、市全体の財政健全化、そして正直に納めてくださっている市民の皆さまを守ることにも繋がるわけですから、これは全市民の皆さまに関係がある話です。
勉強会を通じて痛感したのは、現場には現場の知恵と苦労があり、制度には当然に一応は理屈がある。しかしながら、それが市民の納得や理解に繋がっていないのであれば、やはり議会として問題提起することが必要だと考えます。
取るべきものはしっかり取ること、取れない理由があるなら放棄にも合理的に取り組んでいくこと、そして公平・公正な仕組みを構築していくこと。
市民の皆さまと共に考えつつ、これからもその助けとなれるように努めていきます!

長くなりましたが、本日はこんなところで。また明日!